まずは簡単にまとめると、
- レスリング:古代から続く格闘技の一形態で、二人の選手が手ぶらでの組み技を競います。これはオリンピックの公認競技として知られています。
- プロレス:観客を楽しませるための演出が施された試合を展開する商業的な格闘技です。レスリングと共通の起源を持ちつつ、エンターテイメント性を前面に押し出して独自に進化しました。
この記事では、これらの格闘技に関する更なる詳細をご紹介します。
レスリングとは?
「wrestle」という語から派生したレスリングは、基本的に組み技を競うスポーツです。
広い意味では、相撲や柔道もこのカテゴリーに含まれることがありますが、一般的に「レスリング」と言えば、オリンピックで行われるスタイルを指します。
日本では、この競技は「アマチュアレスリング」または「アマレス」と呼ばれることが多く、これはプロレスと区別するための名称です。
国内では、プロとアマの境界なく誰でも参加可能な形で展開されています。
プロレスの詳細
「プロレス」という言葉は「professional wrestling」の短縮形で、「興業レスリング」や「職業レスリング」とも言われます。
地域によって異なる名称で呼ばれることがあり、ヨーロッパでは「キャッチ」、アメリカでは「レスリング」、メキシコでは「ルチャ・リブレ」として親しまれています。
日本におけるプロレスは、巡業を行ったり、小規模な定期的な会場での試合を通じて興行を展開します。
複数の団体が存在し、全日本プロレスや新日本プロレスなどが特に知られています。
それぞれが独自の特色やルールを持っています。
女子プロレスは「女子プロレス」として区分されており、趣味として無料で行われるスタイルは「アマチュアプロレス」や「ノンプロレス」と称されます。
レスリングとプロレスの違いとは?
それぞれの大まかな違いを表にまとめました。
レスリング | プロレス | |
---|---|---|
カテゴリー | 競技性スポーツ | ショーとしてのエンターテイメント |
観覧料金 | 不要 | 有料 |
勝ち方 | 相手の肩を1秒間マットに押さえつける | 相手の肩を3カウント押さえつける |
競技フィールド | 直径9メートルの円形エリア | 四辺にロープが張られた四角いリング |
対戦タイプ | 一対一のみ | 一対一から多数の選手による戦いまで |
着用衣装 | ワンピーススタイルのユニフォーム | マスクや個性的なコスチューム |
レスリングの特長
直径9メートルの円形エリアで行われる素手の一対一の戦いで、相手の肩を1秒間マットにつけることで勝利(フォール)が決まる。
試合は3ピリオドに分かれ、それぞれ2分間で、2ピリオド先取する選手が勝者となる。
各ピリオドでの技術ポイントが勝敗を左右し、一定の点差がつくと技術的な優勢(テクニカルフォール)で試合終了となることもある。
フォールが成立すれば、ピリオドやポイントに関わらず該当選手の勝利となる。
レスリングには、「グレコローマンスタイル」(上半身のみ使用)と「フリースタイル」(全身使用)の2種類がある。
選手はワンピーススタイルのシングレットを着用し、止血用のハンカチを持つことが規定されている。
プロレスの特徴
四辺にロープが張られたリングで行われる。
対戦形式は、一対一のシングルマッチからチーム戦、多数の選手が参加するバトルロイヤルなど多岐にわたる。
試合は特定の時間と本数で設定される。
勝敗は、相手の肩を3カウントでマットに押さえるか、どちらかがギブアップすることで決定される。
反則は5秒以内なら一時的に許されることもあるが、レフェリーの裁量で反則負けとなることも。
勝敗の最終判断はレフェリーの判断に大きく依存する。
選手はそれぞれのテーマソングに合わせて入場し、華やかな衣装や覆面マスクを着用することが多い。
試合では、ヒーロー対悪役という図式を作り、ストーリー性を持たせた演出が行われ、エンターテイメント性を高めている。
それぞれの歴史
レスリングの古代から現代への歴史的展開
レスリングの起源は非常に古く、紀元前2900年ごろのメソポタミアで見つかった彫像がその証とされています。この素手での格闘技は、実際には記録されるよりもずっと古い時代から存在していたと考えられています。古代には、生活上の必要性と娯楽の両面で重要な役割を果たしていました。
古代ギリシャ時代には、紀元前776年から始まった古代オリンピックにおいて、紀元前708年にレスリングが公式種目として取り入れられました。
紀元前648年にはボクシングとレスリングを組み合わせた競技「パンクラティオン」が誕生し、紀元前632年には少年向けのレスリング競技も開始され、大きな人気を集めました。
紀元前393年に古代オリンピックが終了する頃、上半身だけを使う「グレコローマンスタイル」の基盤が形成されました。
中世には、騎士の訓練としてレスリングが重視されていましたが、火薬の発明と戦闘スタイルの変化に伴い、レスリングはスポーツとしての発展を始めました。
イギリスに伝わったレスリングは、「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」というスタイルを発展させ、これが現在の「フリースタイル」の原形となりました。このスタイルはアメリカやイギリスの植民地を通じて世界に広がりました。
近代オリンピックでは、1896年の第1回大会で「グレコローマンスタイル」が取り入れられ、その後「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」が加わり、2種目制となりました。この「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」は後に「フリースタイル」と改称され、現代の形に進化しました。
日本では1931年に早稲田大学レスリングクラブの創設により選手の育成が始まり、オリンピックの第10回大会から参加しています。
プロレスの起源とその進化
プロレスの始まりは、古代ギリシャで行われたレスリングとボクシングの要素を組み合わせた「パンクラティオン」という競技にさかのぼるとされています。
古代には賞金を狙う職業レスラーが存在していましたが、現代の興業形態とは異なりました。
イギリスでは「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」というスタイルが誕生し、アメリカでは賞金をかけたレスリングの興業が行われ、これらがプロレスのルーツと考えられています。
19世紀の後半にアメリカで、サーカスの一部としての「カーニバル・レスリング」が広がり、観客向けのレスリング・ショーへと発展していきました。
1910年代に入ると、人口の都市部への集中に伴い、巡業のスタイルが変わり、都市を中心にする形態に変化しました。この頃からレスラー間のストーリーが構築され、エンターテイメント性が高まり、「ヒーロー」と「悪役」というストーリー構成が育まれました。
日本では1887年に東京の銀座で初めて「西洋大角力」としてプロレスが開催され、戦後は敗戦のムードを払拭するスポーツとして人気を博しました。その後、複数のプロモーションが誕生し、分裂を経て現在に至っています。